BALLET & DANCE = My LIFE

バレエのこと。ダンスのこと。

2023年おつかれさまでした!

今年もあっという間に年末がやってきました。

毎年発信をしたいと思いながら結局年末投稿1本だけ、という年が続いていますが、年末に少しだけ私の意識を変えさせてくれるできごとがありました。私には東海千尋という同名の祖父がいるのですが、祖父の著書に出会ったのです。正確には、長くの間存在自体は知っていて、「祖父が書いた本なのかなぁ。」と思ってきましたが、すでに祖父も父も亡くなっているため真偽が確かめられず、手が出ずにいました。が、なんとなく「祖父でなくても同じ名前の人の本だなんて縁がある。」と思い直し、買ってみたのでした。

本の内容は、祖父が経験した戦争の体験記で、実に壮絶で凄まじい時代を生き抜いた人だったことを初めて知りました。冒頭「私たちの世代は、まるで戦争をするために生まれて来たようなものです。」という言葉から始まる文章にはぐっと心を締め付けられ、祖父が生きてくれたことで自分が今ここにいることの奇跡をしみじみと感じる瞬間でした。

と同時に、文章は、世代を超えて、時代を超えてつながり続けることを改めて感じました。「やっぱり思いを文章にしておくことって意味があるな。」と感じたことを思い出しながら、とりあえず重い腰を上げ、ぎりぎりですが、今年の総括と来年への抱負に繋げたいと思います!

 

 

チームでの仕事の進め方を理解する

所属する株式会社wevnalは、8月末決算で今年9月から14期を迎えました。今年前半の13期はSeriesBの資金調達完了で2023年を迎え、その後創業事業であるSNSマーケティング事業を2月末に事業譲渡し、また期末には事業譲受案件もあり、と目まぐるしく大型の法務対応案件が続きました。

 

基本的に資金調達や組織再編に対する法務の関わり方は、案件としてはラストワンマイルとなる契約条件の調整が業務の中心になりますが、今回の事業譲渡・事業譲受においては、契約締結後~事業譲渡(譲受)完了までのプロジェクト管理を主導したことが印象に残ります。

元々夏休みの宿題は8月31日に徹夜でどうにかするタイプ。宿題管理もろくにできない人間がプロジェクト管理をするということで、2月末の事業譲渡の裏側は、社内で追い立てられ、ひーひー言いながら管理していたのが実情です。

でも、この経験を通じて、自分ひとりではどうにもならない案件について、どうやったら周りの人に気持ちよく協力してもらえるのか、どれくらい先を見越して動く必要があるのか、など、チームでの仕事をようやく掴みかけることができました。

 

私は法律事務所所属よりも企業の従業員でいる時間が長いので、チームでの仕事をできている気になっていたけれど、実は1人で事業と対峙していることが圧倒的に多かったんだ、と今更ながら気づきました。そして、チームで仕事をするには、1人で仕事をするときとは違うところに頭と時間を使わないとみんなが気持ちよく仕事ができないことも、ようやくきちんと理解することができたのでした。

 

2月の事業譲渡であきらめずに追い立ててくれた上司Nさんや、一緒に協力してくれた譲渡先に転籍したマネージャーIさんには感謝しかありません。また、その後私がチームでお仕事するうえでお手本にしてきたのは新たに入社してくれたマネージャーのMさん。いつも周囲の人に助けてもらいながら、学び多き1年を過ごすことができました。

 

青空ロイヤル・バレエ鑑賞会@ロンドン

海外へ飛び続けたい

一方で、今年からますますライフワークであるバレエ・ダンスに注力し、コロナ禍の収束も相まって海外にも2回ほど行ってきました。6月にはイギリス・フランス・オランダ・ベルギーを巡り、クラシックからコンテンポラリーまで幅広い作品に出会い、現地で活躍する方々とお話する機会を得ました。この経験を通じて、舞踊の中心地である欧州に足を運び、作品に直接触れることの重要性をひしひしと感じています。世界基準の作品づくりや日本の文化の発展を目指す以上は、目指す世界を肌で感じなければなりません。来年も今年以上に海外に出ていくことを志向したいと思っています。

 

また、11月末から再度イギリスを訪れ、ロイヤル・オペラ・ハウスで24年に日本に招聘するオペラ作品や2回目の「ダンテ・プロジェクト」を鑑賞するとともに、初めてバーミンガムにも足を運びました。ロイヤル・バレエの「白鳥の湖」(主演:ナタリア・マカロワ、アンソニー・ダウエル)を観てバレエに魅了された私にとって、ロイヤル・オペラ・ハウスは聖地そのもの。年に2回もその地を踏めたことに感動を覚えつつ、去年の病気から元気に戻れて本当に良かった、と健康のありがたみを痛感しました。

超弾丸でしたが、6月感じた「生で観なければ」の思いだけで迷いなく渡英。初めてロンドン以外の都市も体験することができ、アメリカ以来の都市比較や客層・劇場の違いを知ることができたことも新鮮でした。来年は、ますますバレエ・オペラ・ダンスにどっぷり浸かる生活になることが決まっています。新たな挑戦となりますが、自分から積極的にぶつかっていく姿勢を忘れず、自分なりの価値発揮を目指していきたいと思います。

 

バーミンガムのクリスマス・マーケットはドイツ以外では最大級らしい!

 

大学院進学

11月末のイギリス渡航からの帰り当日、出発5時間前に復路の飛行機がキャンセルになりました。実は、元の飛行機が日曜の午前に帰着予定で、同日の午後3時前から大学院の二次面接に臨む予定でした。飛行機がキャンセルになって目の前が真っ暗になりましたが、急いで別便を探し、何とか見つけたフライトは午後1時半ころ到着予定。

これで間に合わず、二次面接を受けられなかったら潔く大学院を諦められると開き直りつつ、最後は羽田空港を大爆走。タクシーの運転手さんによる華麗な運転さばきで奇跡的に定刻どおりに早稲田大学に到着し、予定どおり面接を受けることができました(大荷物のワンピース姿で面接を受けていたのは私だけでした笑)。

結果、無事合格!きっと何か縁があって導いてもらったのだと思い、かなり不安も大きいのですが、来年4月~早稲田大学ビジネススクールの夜間主総合コースに入学します。

 

23年に入ったときから、少しインプットの時間が欲しいと思い、海外大学院進学を目指してIELTSの受験や大学院探しを進めていたのですが、いろいろと環境の変化もあり、海外に年単位で進学することは難しい見立てとなりました。そんな折、去年もウォッチしていた早稲田大学ビジネススクールの入試時期が近付いていることに気づきました。なんと小論文試験がなくなり私でもどうにかなるかもしれない、と感じ、思いの丈を詰め込み今に至ります。

 

「バレエ・ダンスの世界をどうやったら日本でさらに成長させることができるのか」「どうしたら日本でダンサーが生活するのに困らない環境をつくることができるのか」。昔からずっと思っている問いを、アカデミックなインプットと実務のアウトプットで行き来する時間を通じて深めてみたいと思っています。

ばたばたの中で受けた面接で、教授陣と話した「なぜバレエ・ダンスの世界にいる人がMBAなのか」のやりとりをするだけでもわくわくが止まらず、自分の考えを形にしディスカッションすることの面白みを感じています。かなり大忙しな2024年になりそうですが、来年も自分らしく全力投球で邁進していきたいと思います。

 

あとは、毎年言っている英語。出張などで具体的に英語力不足を痛感する機会も多くなり、少しずつ本気で取り組み始めています。こちらは来年末には多少進歩がみられるようにまずは大学院が始める3月末まで集中的に取り組む予定です。

 

今年もお世話になってみなさま、本当にありがとうございました!来年もどうぞよろしくお願いいたします。

2022年おつかれさまでした!*記事を移動しました。

*2023年の年末投稿に向け、これまで書いた2021年・2022年の年末投稿をNoteから移動しました。

 

前回の記事から1年経ってしまったことに驚きつつ、1年の締めくくりということで今年のまとめを書きます!

毎年年末には今年も1年早かったなぁ…と思うのが世の常ですが、今年は一味違った感覚です。 過ぎてみれば早かったような気もしますが、永遠と感じられるほど時が長く感じていた瞬間もあり、今思い返してもやっぱり長かった。

なぜなら、今年の半分近くを病気治療に費やしていたから。ありがたいことに今まで入院するような大きな病気をしたことがなかった私にとっては、初めての経験でした。
以下の写真は手術日当日の早朝。とってもきれいな空でした。

 

 

今年のハイライト:子宮頸がん

3月に健康診断結果の紙面上で「がんである」と言われてから9月中旬まで、以下の治療を受けてきました。

4月末:円錐切除(2泊3日入院)

5月末:手術(2週間入院)

8月~9月中旬:6週間の抗がん剤放射線治療

子宮頸がんステージⅠA2期(旧基準ではⅠB1期)としての標準治療を受け、手術・抗がん剤放射線という癌の基本治療をフルコースで経験したことになります。

・・・淡々と治療経過を書くと以上に過ぎないのですが、とにかく怒涛の6か月でした。私の場合、当初の精神的なショックは病気を受け入れることで乗り越えられたのですが、手術だけで終わると甘く見ていたところに抗がん剤放射線治療が決まり、最後は体力的にもなかなかしんどかったように思います。 
とはいえ、終わってみると、結局手術直後が一番しんどかったかも?とも思うので、肉体的な痛覚や衰弱によるつらさといった記憶は、どんどん曖昧になっていくものだなと感じます。

一方で、治療の過程を経るなかで感じた、これまでの働き方に対する反省や家族に対する思い、そして、入院しながら整理した残りの人生に対する向き合い方などは、これからの生き方の指標として、一生私の心に深く刻まれました。

まず、お世話になった医療従事者の皆様には感謝の言葉しかありません。病院にいらっしゃったみなさんのプロフェッショナルさ、献身的な姿勢、人としての温かさは、ずっと忘れられません。

また、病気になったことで、会社の仲間たちには多大な負担をかけてしまいました。病気になるまでの私の仕事の仕方に大いに反省すべき点があり、必要以上に無理をかけてしまったと感じています。謝りたい気持ちでいっぱいですし、一方でここまで支えていただいたことに感謝です。

会社のみんながお守りを送ってくれた!うれしかったです♡

最後に、病気になるときには本人だけでなく家族も同じくらいつらい思いをすることも初めて身をもって体験することができました。

病気は最後は本人の闘いなので、家族にとっては何もできない無力感が続きます。とはいえ、本人は精神的に浮き沈みがあるので支えなければならず、その中で、病気を止められなかったことに対して自身を責める気持ちもあったと思います。 さらには、自身は病気ではないので仕事は普通に続けなければならないし、公言できる内容でもないので愚痴を言える場所も少ない。

本人は家族にも社会にも甘えられるけど、家族は日常生活にアドオンで病気に向き合う必要がある点ですごく負担がかかるものだな、と気づくことができました。支えてくれてた家族には心から感謝ですし、私も家族の立場になった時には全力でサポートすることを誓います。

総じて、癌になりいろいろなメッセージを受け取ることができ、ポジティブな経験と捉えています。引き続き再発のリスクはゼロではないのですが、毎日を大切に生きていきたいと思います。

 

大人の階段を登りたい

そんなわけで、今年は仕事にかけられた時間自体が例年に比べ非常に少なかったのですが、その中で関わることができた仕事は密度の濃いものだったともいえます。

会社関係では、役会対応・内部監査・Pマーク/ISMS更新・規程運用など(年末にビッグイベントもありました。来年公開です。)が一巡し、いずれもペースが掴めてきて「経験したことがある」から「できる」といえる状態になりました。 
スタートアップの顧問業務はペースを落としていたのであまりサポートできなかったのですが、この後書くとおり少しずつ関わる業務内容をシフトしているので、不可避ではあったかなとは思います。

バレエ・ダンス関係に関していえば、今年はこれまで以上に多様なバックグラウンドを持つ方々と関わる機会に巡り合いました。スタートアップの世界にいると、比較的同年代の近しい思考を持った人たちに出会うことが多いのですが、バレエ・ダンス関連のステークホルダーには年齢・職種・志向等において実に多様な方々がいらっしゃるので、大いに刺激を受けました。

特に、今年は、議論をリードしなければならない立場になる場面や、自分より圧倒的に経験値の高い方々に対して説得的であることを求められる機会が増えました。その結果として、自分の引き出しの少なさや未熟さを突き付けられることが多く、一言でいえば「もっと大人(mature)になる」というのが来年のテーマになりそうです。

DaBYにて恒例のセミナーも。治療中なので目がぼやっとしてます。

 

人生の残り時間の使い方

癌になったことで一番変わったことは、明確に人生の残り時間を意識するようになったことです。癌には再発がつきものということもありますし、一定病気になりやすい体質ということもあるかもしれないと思うと、「無駄な時間は1秒もない」と思考せざるをえません。

改めて残された人生で何をやりたいのか、を入院中ベッドの上で自問自答していましたが、私の結論は「やっぱりバレエ・ダンスしかないんだなぁ」でした(笑)本当に突き詰めると、どこまでいってもバレエとダンスにしか興味がない。小学生のころから何も変わらないんですね。

その決意(あきらめ?)を踏まえ、もともと少しずつバレエ・ダンスに関わる業務を増やしていくことを想定していましたが、2023年はもう少しドラスティックに変化させていく兆しの年とすることを決めています。
(会社の仕事は今までどおり続けます!)

まずは、本気で英語に取り組む!(去年の振り返りでも全く同じことを言っています…)ということで、今年中にIELTSを受験するとの目標は達成しました。また詳細を書こうと思いますが、アカデミックな意味でも方針転換をするため、留学することを視野に入れています。

あまり事例のない留学だと思うので(実際今私も情報収集に苦慮しています)、バレエ・ダンスの世界に関わりたいと思う人たちの参考にしてもらえたらいいのかもしれないと思っていて(私が成功しても失敗しても参考にはなると思うので…💦)、来年こそはもう少し発信や記録にも本腰を入れていきます。(これも去年の振り返りで同じことを言っている…苦笑)

そのためにはまずは仕事量を減らすことから始める。
依頼いただいた業務を断ることがとっっっても苦手なのですが、1日は24時間しかなく、人生の優先順位を明確にしたいま、取捨選択のタイミングです。

来年の今頃はこの投稿を見返してどう振り返れるかな、と今から楽しみ。
来年も全力で走り抜けたいと思います!!
今年お世話になった皆様、本当にありがとうございました。



 

 

 

 

 

2021年おつかれさまでした!*記事を移動しました。

*2023年の年末投稿に向け、これまで書いた2021年・2022年の年末投稿をNoteから移動しました。

 

いよいよ2021年も残すところ1日を切ってしまいました。
今年もあっという間に過ぎ去ってしまった…ということで、来年に向けての振返りをしておこうと思います。
普段できないことばかりが目に付く性格なので、「何ができたか」を中心に書いてみます!

 

 

2つの立場からの資金調達業務

今年はありがたいことに、➀クライアントとしてリーガルサポートしている企業の資金調達②自分が役員として所属しているwevnalの資金調達 という2つの立場から資金調達に関わることができました。
前職ではCVCの法務担当者としてスタートアップの資金調達に関わってきたので、実に様々な角度から資金調達に関わる機会に出会ってきました。

常に当事者に伴走する意識を強く持ってすべての業務に従事しているつもりではあるものの、自分自身が所属する会社の資金調達となると、「会社対VC」の構図に関わる条文よりも、会社の運営に対する負担感や役員責任の重さの方がリアルに感じられたのは新鮮でした。
改めて外部からのサポートと当事者の違いを突き付けられる瞬間も多く、「伴走」という言葉の重みを感じる経験となりました。

また、資金調達のプロセスを初めて一から横で見る機会を経て、資金調達における法務の役割は、重要ではあるものの限定的でしかないな、と一抹の寂しさを覚える瞬間も…。

 

コーポレート分野の業務経験拡充(会社法・登記・労務

スタートアップの法務に関与することの多い私ですが、これまではビジネスに近い法律(例えば、電通法・特電法・個人情報保護法・薬機法・特商法・景表法など)に関与することが多く、実はコーポレート系の法律業務は手薄な状態でした。

が、今年は機関運営やSO発行等を通じた会社法周りの対応業務が爆増したのが大きな特徴の1年となりました。一からやるのはどうしても時間がかかるのですが、今更ながら会社運営の基礎となる各法律を扱うことができたのは良い経験でした。
インプットだけだと全く頭に残らないタイプなので、実践通じてようやく身についてきた気がします。

せっかくなので、今年は登記もほぼ自分で対応してみて、登記実務特有のルールを知り、細かい補正対応なども経験できました。直近はさすがに信頼できる司法書士さんに任せていますが、司法書士さんとの連携をスムーズにできるのは、自ら経験した賜物だと思っています。

労務に関しても、これまでは会社側での訴訟対応に従事したのみだったので、日々の会社運営に関わる労務対応業務を概ね押さえられ、今後活用できそうです。労務系の手続は、給与関連や保険など細かいものも多いので、そのあたりは社労士さんにお任せですが、外しちゃいけないところを知っていることが重要だったりします。

 

実務系の法律業務は不完全燃焼。。。

コーポレート分野に大きな比重があった今年、実務系の法律業務は不完全燃焼でした。もちろん日々業務対応していましたが、今まで持っている知識をあてはめているだけで、積極的な情報収集や知識補充をしたわけでもなく、十分なリーガルサービスの提供ができていないことも多かったように感じます。

そんな中で対応することが多かったのは、個人情報保護法と薬機法まわりでしょうか。
いずれも法律家としての業務というよりは、Pマーク・ISMSも含めたセキュリティ全般の取組みや、薬機広告周りの運用業務でしたが、来年は、今年培った実務運用に、確固たる最新の法律知識を追加していきたいと思っています。

 

ダンス・バレエは圧倒的な量・質の経験ができた

とにかく経験の幅が広がった1年でした。これまでは、自分1人でどうにかこうにか経験を積んできましたが、今年は多くの方々と1人ではできない経験をさせていただきました。

2月にサポートしたクラファンでは約2,000万の資金調達をすることができました涙 バレエファンのあたたかさと新たな資金調達の可能性を強く感じたとともに、リソース不足の中で対応することの難しさやクラファンの次に繋げられなかった悔しさもあります。

イスラエル・ガルバンの招聘におけるマーケティング業務のサポートでは、公演を訴求することの難しさに改めて直面しました。一方で、「熱狂」はつくることができるものとの確かな手ごたえを感じることができ、心に残る経験になりました。

クラファンも公演のマーケティングも一回的なものでなく、次に次にと施策を打ち続けないと効果半減なので、次は長期のマーケティングを軸に、短期の山を作るという発想で施策をやってみたいところです。

リーガル面でいくと、配信関連の相談が圧倒的に増えたのも今年ならではでした。コロナ禍によりダンス・バレエは映像配信という新たな領域に本格的に足を踏み入れていると思いますが、今後契約実務が固まっていくであろう配信について、このタイミングで直に関わることができたのは財産になります。

 

来年に向けて思っていること

年明けの発表になりますが、2022年からは新たな挑戦が始まります。
経験のないことばかりにぶつかっていくチャレンジなので、意識して行動していかないと、困難への対処だけで1年が確実に終わっていってしまいます。
それは絶対いやなので、いつも以上に意識・アクションを明確にした1年にしたいと思っています。

弁護士というプロフェッショナルとして当たり前の法令のインプットや知識拡充は大きな課題です。「時間がない」と言い訳しない時間づくりと、インプットだけで自分ごと化できない性格を踏まえたアウトプットとセットの仕組みづくりをしていきます。
合わせて、組織作りにおける英語、交渉のための英語はいよいよ必須になる予感。ここは短期・中長期のゴールを作って本気で取り組みたいと思います。

また、ダンス・バレエについては、今年後半は時間が十分に取れず離れてしまうことが多かったのですが、「ダンサーがダンス・バレエだけで暮らしていける世界を作りたい」とのWillは今も変わっていません。
諦めるのでなく、自分がもっと関与するためにできることを見つけ、自ら変えに行く(変えるための足掛かりをつくる)ことを実践していきたいと思っています。

詳しくは改めて2022年になってから書こうと思います!(発信を増やすのも目標だったりしますので…)
みなさま良いお年を!

 

バレエ界以外で活躍するバレエ経験人材が増えることを祈って

先日、素敵な機会をいただき、「バレエと私」とのタイトルで、バレエが私に与えた強みや人生に与えた影響についてお話してきました。

主催してくださったのは、「バレエ界をサスティナブルに」というモットーを掲げ、バレエ愛をもつ学生さんたちが構成する団体Wake Up Pointe Shoesさんです。

Twitterでご連絡をいただき、とっても素敵な活動をされているなと感じ、とんとん拍子に決まったイベントでした。

 

聞いてくださったのは10代後半から20代前半のバレエ経験がある皆さん。バレエへの向き合い方やこれからのキャリアで絶賛悩み中・迷い中とのことでご参加いただきました。

私から見たら若いというだけで羨ましい限りですが、同じような経験を持つ者として、改めて自分の半生を棚卸しし、共有し、皆さんとディスカッションしてきました。

色々なお話ができたので、せっかくならまとめておけば(超ニッチですが)何かの参考になるかもと思い、ブログにも綴っておこうと思います。

 

2023年5月、3年半ぶりにロンドンに行ってきました。このあたりのこともいずれ書きます…

 

私の人生はバレエでできている

私の人生は、ざっと以下のような感じ。
第1章:本気でダンサーを目指したバレエ漬けの時代(1991年~2003年)
第2章:方針転換しつつもバレエへの未練が捨てられなかった移行期(2003年~2014年)
第3章:バレエ以外のキャリアが確立され一歩引いた目でバレエを俯瞰する現在(2014年~)

人生の中でバレエの濃淡は適宜変化はあるものの、やっぱり私の人生はバレエとともにあります。

年月を経るにつれてバレエと自分の関係性は変わっていき、バレエと自分が混然一体としていた時期と比べると、いまは随分とバレエを客観視することができるようになりました。

バレエがなくなる=生きる動機がなくなる、だった学生時代に対して、いまは主軸が法務に移っているので、バレエを失う怖さがない分思いきりバレエに関与できている部分もあるのかもしれません。

 

バレエのことを割り切るまでに10年

今回自分の人生を振り返ってみて改めて気づいたのは、移行期(第2章)が思っていたより長いんだなぁということ。
参加者の皆さんからは、バレエの道から方向転換しつつあるタイミングではあるものの、なかなか決めきれないとのコメントが多かったのですが、「そんなに簡単に割り切れるものではない。」というのは私自身も身をもって体験しています。

2014年に最終的にバレエを割り切って考えることができるようになったのは、自分の中で「これだ!」と思える仕事に出会えたことが大きかったように思います。それまでは、弁護士業務自体がしっくりきておらず、複数回転職も経験しましたが、2014年になって、ようやくやりたいことが明確化して仕事に邁進していくことができました。

やっとバレエから吹っ切れて、新たな道を歩み始めた瞬間だったと思います。

 

そして、今振り返ってみて思うのは、「バレエは人生を懸けてやってきたものだから、簡単には割り切れなくて当然だった。」ということ。
結果的には焦って何かを決める必要はなかったし、後悔が残る選択をする方がよっぽど良くなかった。というか、バレエに対して燻る気持ちをきちんと成仏させないと中途半端になりますし、結局何度でもバレエに戻ってきてしまいます。
そんな自分に自己嫌悪を感じることもありましたが、決してダメことではなく、次に進むためのステップでした。行きつ戻りつしながら少しずつ前に進むものだと受け入れること。何度戻っても前に進むことをやめなけば、どこかで必ず道が開けるものだと思います。

 

バレエから得たもの

スポーツや芸術に取り組んできた人全般に言えることだと思いますが、日々鍛錬してきて一定の体力があると、集中力の質が違います。一つのことにコミットするには気持ちと体力の双方が必要ですが、基礎となる体力はバレエで十二分に培えていると思います。

ただ、バレエをやめると体力はどんどん低下するもの。特に年齢を経るにつれて加速していきます。私は病気だったせいもありますが、バレエによる体力貯金はもはやなく、集中力の質の低下を痛感中。少しずつ体力を増やしていかなければ…。

 

また、舞台で他者を察知する力や空間を支配する力、また本番の強さといった点も、舞台芸術という一発勝負の世界で生きてきたダンサーの強みであるように思います。どの世界においても「ここぞ」というところで実力を発揮できることは大きなアドバンテージ。周りにダンサーばかりいると、そんなことは当たり前かもしれないけれど、一般社会から見たら立派な能力です。バレエをやってきた人たちは、そういった特殊技能を身に着けていることに自信を持って社会に飛び出していってほしいと心から思います。

久しぶりのオペラ座。もっと生で観ないといけない。

才能で淘汰されない世界があることを知る

今回のディスカッションで出てきた話として面白いなと感じたこととして、「バレエのように才能の有無で決まってしまう世界はほんの一握り」という点が挙げられます。
バレエは、もちろん練習量や努力で補える部分はあるとしても、最後は、体型・柔軟性・身体能力・存在感といった努力でいかんともし難い「才能」で決まってしまう世界です。


でも、これは芸術やスポーツなど限られた世界の話であって、現実の世界のほとんどは努力すればどうにかなる世界だと感じています。特に、社会人になってからは、多くの人が目の前の仕事に追われ、日々の生活で忙殺されていってしまうので、ほんの少しの努力が大きな差になって表れます。

 

小さなころから地道な練習を積み重ねてきたダンサーたちは、努力の習慣と成功体験があり、努力できる才能を必ず持っています。そして、努力でどうにかなる世界を「自分次第でどうにもなる世界」とも感じられるはず。この感覚が一般社会でいかに強みになるか、改めて思い出す良い機会となりました。私自身も司法試験などを通じ、努力でできてしまうことの単純さや到達可能性の高さを身をもって経験してきてはいますが、改めて自分への戒めとして、仕事を言い訳にせず少しずつ努力することを習慣化していきたい。

 

社会で活躍するバレエ経験人材が増えること=バレエ界を盛り上げること

私は、ダンサーを志していた人たちが、バレエ以外の世界でもどんどん活躍し、「ダンサーを目指す人たちってこんなに世の中で活躍できるんだよ」と夢を見せることが、次世代のダンサーを生み出し、バレエの世界を盛り上げていくことになると信じています。


私自身も微力ながらそのような存在になれるように日々頑張っているつもりです。今回のセミナーに来て下さった方もそうじゃない方も、バレエ・ダンスに関わる方々が、仮にダンサーの夢をあきらめなければいけなくなったとしても、それは新たな道の始まり。

それまで培ってきた長い時間と自分の経験を信じて、次の道へと突き進み、バレエを経験した多くの若者が、少しでも世の中の幅広い分野で活躍していくことを願ってやみません。

イスラエル・ガルバン公演SNS隊長の独り言

*2023年2月11日にnoteからはてブロへこの記事を移動しました。ガルバンの招聘公演を終え、今DaBYはKidd Pivot招聘公演のチケット発売中!今回はどんなことができるかな。

kiddpivot.dancebase.yokohama

 

1年弱投稿していなかったnoteですが、ちょっと思うところがあり、再開してみようかと考える今日この頃。
まずは、DaBY(Dance Base Yokohama)リーガルアドバイザとして、絶対書かなければと思っていたこの件について、綴ってみようと思います。

・・・・・

はや1カ月以上時間が経ってしまいましたが、夢のように駆け抜けていったフラメンコ界の革命児イスラエル・ガルバンの招聘公演。

danceconcert.jp

今も鮮明に頭に浮かぶこの公演の主催をしていたのがDaBYであり、招聘が現実味を帯びたその日から公演が終わるまでの約1か月間、私はSNS隊長として「広報」の一部に携わっていました。

 

 

リーガルアドバイザーがSNS隊長!?

リーガルアドバイザーがなぜ…?と思われたのは、みなさんだけではありません。任命されたときは私もビックリ笑
理由は、こちらのクラウドファンディングでした。

readyfor.jp

DaBYでは、スタッフが自身の知見や経験を持ち寄る勉強会を開催しているのですが、このクラファンでプロマネとして関わった学びを共有したことが、本公演でSNS隊長に任命していただくきっかけになりました。

 

リーガルアドバイザーは、通常契約周りやリスク整理で関与していますが、やはり関わる範囲は限定的。クラファンがきっかけで広報に関われるなんて夢のよう…!とキラキラした思いで始めたものの…
蓋を開けてみれば心が折れそうになることの連続。皆さんに助けていただき、どうにか公演最終日まで走り切ることができました。

 

そんな貴重な経験を忘れたくない、絶対に次はより良いものにしようとの思いもあり、このnoteを残しておくことに決めました。

 

18日間の短期決戦

コロナ禍における海外招聘だった本公演。詳細は割愛しますが、公演が実現しそうだと決まったのは、神奈川公演初日まで1か月を優に切ってから。チケットの販売を開始したのは、初日のわずか18日前のことでした。

通常、ダンスやバレエの公演は、開催日の数か月前~半年くらい前から公演を告知し、様々な広報手段を駆使してチケットを販売します。
販売期間18日間など異例中の異例。無謀そのもの。

 

もともとダンスという敷居の高さから、興味ゼロの人をチケット購入に至らせることは難しいと考え、バレエやコンテンポラリー・ダンスの鑑賞経験がある方・イスラエルのルーツであるフラメンコ業界の方を対象に発信していましたが、この期間でチケット購入の魅力づけをすることがいかに難しいか、ひしひしと感じる日々でした。

 

また、日本で行われるダンス公演は、劇団四季のようなロングラン公演ではありません。公演が始まってから、実際観に行った方の「絶対観に行くべき!」との信頼性ある熱いコメントが投稿されても、残公演日数が少ない=選択肢が少ないので、公演が始まってからチケット売上が上がっていく構造にもなりにくいように感じました。

 

結局、公演直前のマーケティングは付け焼刃でしかなく、日常的にDaBYのファンになってもらい、コアファンに対して本公演をもっとアピールしておくことが必要でした。
(今回はコロナ禍の招聘で、開催が危ぶまれており、大々的な告知は難しかったのですが、DaBY主催公演のラインナップとして、もっと計画的に、様々な方法で情報を小出しにすることはできたかも…ということです。)

 

また、DaBY主催公演であればクオリティに間違いないと信頼感を持っていただける状態を作っておくなど、直接的な公演の魅力付けだけでなく、新たな需要の芽を日常から創出する工夫をしておくことも重要であるように感じました。

 

みんなで「本番まであと1日!」のポーズ。マスク付き。

チケット購入は原則1人につき1枚

クラファンとは事情が違っていた、と感じたこともいくつか。

 

クラファンって、実は一度支援してくださった方が、追加支援をしてくださるパターンが相当額見受けられます。
目標達成額に近づいているときに「もう1回支援したら目標達成するな。目標達成すればリターンをもらえるから支援しよう」と思って追加支援してくれる方もいますし、シンプルに「もっと応援したい」という方も。

 

しかし、チケットの場合はこうはいきません。
もちろん一度観た方が「再度観たい」と思って追加購入してくださる場合もありますし、中には、ありがたいことに毎日観に来てくださった方もいらっしゃいました。
しかし、それは例外的な話。

 

1人につき1公演1枚が原則です。
もちろんご家族やご友人にご紹介いただけて複数枚ご購入くださった方も沢山いらっしゃったかと思いますが、話題性は抜群でも国内ですでに定評がある公演とは一線を画していたので、限界があっただろうと思います。
そして、クラファンなら支援金額にはかなりのバリエーションがありますが、チケットだと、S・Aといった券種による金額差分しかないのも、売上金額という意味では痛いところ。


チケット以上の特典を付け、金額にバリエーションを設けることも、考えてみてもいいのかもしれません。

 

同情による共感は使いにくい

また、クラファンと大きく異なるのがこの点です。
クラファンはある意味お祭りなので、目標達成金額に至らなければ、「助けてください」「目標達成まであと●円!」といったいわゆる煽りや陳情も、発信者側に抵抗がありませんし、お願いベースの発信が当たり前なので、受信者側にもさほど違和感がありません。

 

しかし、チケット販売は、フルハウス300席のときに、「あと100席残っています!」と煽るのは、「あ、そんなに人気がない公演なのね」といった評価に直結しやすいのでは、との不安がありました。


煽りは、消費者心理をくすぐる重要な手法ですが、このようなレピュテーションリスクを意識したときに、なかなかこの手法を使えなかったことも、チケット販売の盛り上がりを演出できなかった1つのポイントであっただろうと思います。

 

日次のKPIセットでモチベ維持を

そんなこんなで、毎日チケット販売数を追っていても、それほど数は伸びないので、だんだんモチベーションは下がっていきます。

 

そんな時の助けとして、TwitterInstagramのフォロワー数の伸びは常に追っておくべきだったなと思っています。日々発信し、多くの方がリツイートなとしてくださっていたことで、ありがたいことに、フォロワー数は伸びていた実績があったからです。

 

また、今回の集中的なSNS発信施策により集まっていただいたフォロワーの方々は、これからのDaBYを見守ってくださる方々でもあります。
今後は、人数や反応など、これからに活かすべき指標を計画の段階からあらかじめ定めてトラックすることも必要だったな、と感じています。

 

小括

今回は、気づきを中心に書いたので、「できなかったこと」や改善点が中心になってしまいましたが、「やってみて良かったこと」「スタッフの皆さんに助けていただいたこと」「お客様に救われたこと」もたくさんあります!!

 

何より、どんなことでも「やってみなはれ」と任せてくださった唐津さん・勝見さんには感謝しかありません。

次回はそのあたりのことを書くことにして、今回はこのあたりでお開きに…。

*2023年2月11日追記:2記事目がありそうなのに、ない!今年は発信を頑張る。

YouTubeチャンネルを始めます!

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YouTubeチャンネル「Ballet & Dance TALK」を始めます!

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私が今住んでいるロサンゼルスは、外出禁止令が出て2週間になりました。不要不急の外出はできず、唯一の楽しみであった散歩も、ビーチやトレイルの入口が閉められてしまったため、近所をうろうろするのみ。スーパーやドラッグストアは営業していますが、入場制限がかかっているので、時間によっては長蛇の列を並んでいます。

 

と、気持ちが下がる話ばかりしていてもしようがない!

この状況を乗り切るため、1人1人ができるだけ長い時間を家で過ごすことが大切なのだとすれば、その中でできる新しいことを考えようと思い、動き始めました。

 

といってもなんだか唐突な感じではあるので、まずはこのブログで、なんでこんなことを始めようと思うに至ったか、その経緯を書いておくことにしました。また、テストも兼ねてYouTubeチャンネルにもやろうと思っていることを簡単にまとめた動画を作りました↓

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動画は4分で終わるので、ぜひ見ていただけたら嬉しいです!あと、最後に詳細書きましたが、チャンネル登録がダンサーたちに収益を還元するための大きなきっかけになります!ぜひチャンネル登録をお願いしますm(_ _)m

 

 

コロナショックが起きて気づいたこと→国に頼れない!

コロナの広がりにより、芸術界・エンタメ界の弱さをまざまざと見せつけられました。しょせん世の中が平和で安全でないと簡単に吹っ飛ぶ世界なのだと。

 

2月26日、首相がイベント等の中止等を要請して以来、次々と中止判断をする公演のニュースを目の当たりにし、多大な損害を目の前に中止判断した主催者を思うと身が切られる思いでした。一方で、公演を強行しても、かなりのお客様が払い戻しをご希望されますし、クラスタになりうるリスクを抱え、批判にも耐えなければならない‥開催しても中止しても待ち受けるのは「闇」。

 

そして、判断に翻弄されるダンサー等の演者たち。

安心して舞台のことだけに集中したい公演直前期に、日々中止判断の連絡を受けて落胆しながら、開催に向けて動く公演のためには淡々と稽古しなければならない状況。そして、中止すれば多くの演者たちが直接的に収入減の被害を被ります。さらに、極めつけは政府の芸術に対する補償の意識の低さ‥。

 

ただ、この政府の芸術に対する支援の低さは今に始まったことではありません。そもそも、国・すべての地方公共団体がこれまでも芸術をしっかり支援していれば、ダンサーや演者たちが今現在こんなに立場の弱い状況になることもなかったわけです。

私たち日本人は、戦後復興のために必要な、会社に従順なモーレツ社員を養成するための教育を受けて育ち、極めて芸術教育が不足した環境で育ってきました。そのために、芸術・文化の重要性を理解するタイミングがないまま大人になり、そんな大人の一部が政治家や官僚になり、極めて脆弱な文化政策が実施されていると思っています。

 

そんな歴史的な積み重ねのもとに現状がある以上、どんなに他国の芸術に対する厚い補償をうらやんでみても、同じだけの補償をしてくれるはずがないのです。むしろ芸術に関わる人たちの情熱だけで支えられているこの環境を前提にしながら、どう立ち向かうのかを考え実行することが建設的だと考えています。

 

そうだ、コミュニティを作ろう!

では、どう実行するのか。ここからは、私が専門とするバレエ・ダンスに関する話です。今考えている中長期のビジョンは、「日本人を世界のバレエ・ダンス界をリードする人材にし、日本のバレエ・ダンス業界を盛り上げる」ことです。

 

バレエ・ダンス業界の主催者が安定的に興行でき、ダンサーたちが安心して公演に向けて集中するためには、バレエ・ダンス業界を盛り上げ、一般の人の認知を上げ、個々人のダンサーたちの評価を上げることが極めて重要です。そうすれば、企業がもっと積極的に支援をしてくれるようになる可能性がありますし、ファンが増えて個人の寄付額を上げることもできるかもしれません。資金が生み出せることは、安定的な興行の第一歩になります。

 

また、個々人ではなく、大きなコミュニティとなれば、またいつかコロナのような事態が起きたときに、政府へ提言をしたり、寄付やクラウド・ファンディングを実施するなど、1人ではできないことができる可能性を広げます。図にまとめるとこんな感じです。

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そこで、私は、まずは現役ダンサー・教師・ファン・未来のダンサーの卵たちを集めた大きなコミュニティを作り、アクティブに活動することを志向し始めました。

きっとみんな同じようなことを考えているダンサーたちが集まれば、多くの企画のアイディアが生まれることでしょう。また、ダンサーとファン、ダンサーと未来のダンサーの卵たちが気軽に交流できる機会を増やすことで、ファンの応援したい気持ちが高まったり、将来に悩む未来のダンサーの卵たちにエールを送ることもできるかもしれません。

 

昔だったら、全国に散らばるダンサー・教師・ファン・未来のダンサーの卵たちを1つのコミュニティにまとめることは簡単ではなかっただろうと思います。しかし、今はSNSがあり、YouTubeがあり、zoomがあり‥個人が大きな資本がなくても気軽に発信し、インタラクティブにやりとりができる時代になりました。

加えて、今はダンサーたちがスタジオや劇場に行けず、家の中にいる時間が長いので、立ち上げ当初にご協力いただくには大きなチャンスだと思っています。いつでも、ピンチはチャンスです。

 

やろうと思っていること→ダンサーへの収益還元

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コミュニティを作るにあたり、YouTubeを軸に置こうと思ったのは、収益を得られる可能性があるからです。私は、このコミュニティを、バレエ・ダンス業界を盛り上げるため、という理由でダンサーたちにボランティアで参加してもらうのではなく、いずれは協力いただいた方に還元できる形を取りたいと思っています。

 

1つの大きな分岐点は、登録者数1,000人です。登録者数1,000人を超えると、ライブ配信での「投げ銭」機能が使えるようになるようです。SHOWROOMのギフトのようなもので、例えばダンサーに質問したいときに、無料のままチャットで投稿するとどんどん後から出てくる質問に押し上げられていつのまにかダンサーに届かなくなってしまいますが、投げ銭をすると、質問の表示時間が延びるのです。

この投げ銭によって得た収益を、すべて参加してくれたダンサーに還元したいと思っています。

 

また、2つめの分岐点は、登録者数1,000人に加えて過去12ヶ月の総視聴時間が4,000時間を超えること。この条件を超えると、広告掲載が可能になるそうです。広告課金で得た収益をどのようにダンサーたちに分配し、どうやって収益を新たな資本として次の取組みをするかはまだ考え中ですが、こちらも必ず還元します。

 

いずれの分岐も長い道のりになってしまうかもしれないですが、必ず実現したい!

もちろんYouTubeだけでなくどんな形でコミュニティを活性化できるのか、引き続き検討していきます。いろいろな形でバレエ・ダンスに関わる方が広くこのコミュニティに参加し、発信し、交流することで、より豊かなバレエ・ダンスの世界の一助になることを目指すと思うと、今からわくわくしています。

 

未来のバレエ・ダンス業界を変える大きな原動力にするために、これからも日本のバレエ・ダンスがますます発展していくために、まずはチャンネル登録をぜひお願いします!

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2月26日イベントの中止等要請を受けて〜中止判断の前に立ち止まって考えたい

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2月26日のイベント等の中止等要請を受けて

昨日、2月26日、安倍首相が新型コロナウイルス対策本部において、「この1、2週間が感染拡大防止に極めて重要であることを踏まえ、多数の方が集まるような全国的なスポーツ、文化イベントなどについては大規模な感染リスクがあることを勘案し、今後2週間は中止・延期または規模縮小などの対応を要請することとする」と述べてから、エンタメ界、美術界、芸術界、スポーツ界が危機にさらされています。

www3.nhk.or.jp

26日以前も、2月20日に厚労省から「イベント等の主催者においては、・・・開催の必要性を改めて検討していただくようお願いします。」とのお達しがあったため、Jリーグをはじめ、美術館やダンスの招聘公演など、じわじわと中止の連絡を目にしてきましたが、26日の声明があってから堰を切ったように中止、中止、中止…。

2月20日厚労省の発表

 

官房長官が、同日午後、中止等要請の対象として想定するイベントは、「全国から参加者を募ったり、国もしくは全国規模の団体が開催したりする、大規模なイベントを考えている」と明言してはいたのですが、実際私が中止判断を見つけたイベントの数々は、大小問いません。主催者サイドの苦渋の決断を思うと、身を切られる思いです。

 

ここで政府の批判を展開するつもりはありませんが、政府の対応は実に無責任で文化軽視としか言いようがありません。

中止等を要請する、つまり中止等を強制しない、というのは、一見聞こえが良いですが、要は主催者に最終決定を委ねることで、国の責任問題を回避しているということです。一律中止にすれば、国の補償問題がより一層声高に叫ばれますからね。

 

しかし、責任を押し付けられた主催者の身になって考えると(私の専門がバレエ、ダンスなので、ここからは主に劇場公演の主催者をイメージして書きますが)、チケットの払い戻し、劇場を借りている場合の違約金、招聘契約を締結している相手方の損害負担等の多大な経済的損害を目の前に、当日までの苦労をすべて水泡に帰して中止するのか、もし続観客が劇場で感染したら、もし死者が出ることになったらとの不安とレピュテーションリスクと訴訟リスクを抱えて続行するのか…想像するだけでくらくらしてきます。

 

今回の発表は、そのような重大な判断を迫るからこそ、「中止等を要請する」と声明を出すだけでなく、少なくとも、スポーツ・文化イベントの何がコロナウイルスとの関係で良くないのか、主催者が続行する場合の劇場の改善ポイントは何か、来場者が来場するかを見極める判断ポイントは何か、等を首相自ら具体的に示すべきでした。

 

もちろん、中止の判断を迫られる主催者や経済的困窮が予測されるアーティストたちの補償にまで踏み込んでくれたら言うことなしでしたが、そんなことまではこの国には期待していません。

ちなみに、「パラサイト-半地下の家族」のアカデミー賞受賞が記憶に新しい隣国韓国は、公演取り消しや延期によって被害を受ける芸術家が緊急生活資金の融資を受けることができるように、来月から計30億ウォン(1円=約0.9ウォンなので、約3億円)規模の資金支援を決めています。パラサイトにどれだけ国の直接間接の文化支援があったかはわからないですが、この資金支援は国の強力な文化支援の姿勢を示す象徴的なニュースだと感じます。

translate.weblio.jp

首相は「この1、2週間が大事」と言っていますが(感染症の専門家から見てもそれは正しいようです)、国のターゲットはあくまでもオリパラです。不要不急の分野ととらえられているオリパラ以外のスポーツや文化イベントについて、2週間経過以降、5月下旬期限のIOCによるオリパラ実施可否判断まで中止等要請を継続、断続させる発表をしても何ら不思議はないと思っています。

 

私としては、今回の首相の発言により「スポーツ・文化イベント=感染の温床」の式が増幅されて、開催続行の判断をした主催者が批判され、結局実質的には中止判断しかできなくなる状況になることが一番こわい。

中止による損害の観点から、開催続行せざるをえない主催者はたくさんいるのに。しかもそれがこの2週間にとどまらなかったら…。

 

演劇集団キャラメルボックスの運営会社の破産は、東日本大震災発生時の公演が劇団史上最大の赤字となったことが原因でした。あの自粛ムードの中では、公演を続行してさえ存続の危機なのです。まして公演を中止したら…。

fringe.jp

主催者の方々には、もちろん安全第一ではありますが、首相の発表に右ならえをするのではなく、正しい情報を取得・評価し、本当に中止する以外方法がないのか、何がベストな対応なのかをフラットに検討して結論を出してほしいと心から思います。

また、観客の皆さまには、劇場に行くリスクをきちんと把握したうえで来場するかを判断し、来場すると決めたからにはしっかり準備して主催者からの注意事項を遵守していただきたいです。そのうえで、この暗いニュースが包み込む今だからこそ、観劇を存分に楽しんで芸術・エンタメの持つ底力を感じてほしいと思っています。

 

前置きが長くなりましたが、以下では改めてコロナウイルスの感染経路や感染力、これを前提とした劇場空間におけるリスクをまとめました。私としては、なんとか開催を続行できるよう検討いただきたいので、開催続行判断をした場合の主催者側のリスクとお客様へのメッセージで締めくくっています。

 

以下の文を記載するにあたっては、できるだけ正しい情報を書きたいと思い、医師・大学・病院等信頼できると思われる以下の素材の表現を使わせていただきました。もし誤りがあれば、ご指摘いただければと思います。

 

特に1つ目に挙げた東北医科薬科大学作成のハンドブックは、開催を続行すると決め観客へのルール作りを進める主催者の方々、劇場に行こうと思っている観客の皆さま、そしてすべての方にとても有用ですのでぜひご一読を!

 

新型コロナウイルス感染症 市⺠向け感染予防ハンドブック [第1版]

誰にでも読みやすいハンドブック形式で、コロナウイルス対策が具体的かつわかりやすく書かれています。

ハンドブック

・高山義浩医師のFacebook

ダイヤモンド・プリンセス号船内の様子をYouTubeで赤裸々に語った岩田健太郎教授に対し、Facebookで反論・意見された医師としてご存知の方も多いかもしれません。私は、岩田教授も高山先生も信頼のおける専門家と評価し、よく投稿を拝見しています。上記のハンドブックも岩田教授がtwitterでシェアされていたものですし、お二方ともとても有益かつ正確な情報を共有してくださっています。

 新型コロナウイルス情報 -企業と個人に求められる対策-

2月20日に作成されたコロナウイルスに関する概要と企業による対策の仕方がコンパクトにまとまっています。字ばっかりなので、1つ目のハンドブックよりはちょっと読みにくいです。

こちらから

・明確な出典はわからないけれど、昭和大学のHPトップの配下にある記事(飛沫感染と空気感染の違い)

こちらから

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一般的な感染経路の種類とコロナウイルスにおける感染強度

劇場のコロナウイルス感染リスクのレベルを確認するためには、そもそもコロナウイルスがどう感染するのかを正確に理解する必要があると考えました(皆さんすでに十分ご存知かもしれないですが、私は情報に埋もれよくわかっていませんでした)。

結論からいうと、飛沫感染もするけど、接触感染に要注意。空気感染はしない(可能性が高い)」です。

飛沫感染とは

感染した人の咳・くしゃみ・つば・鼻水など飛沫(飛び散ったしぶき)の中に含まれているウイルスを口や鼻から吸い込むことにより感染することです。

飛沫というのは、ウイルスにほこりや水が付着するので直径5μm以上と大きめで、1.5メートルから2メートルくらいしか飛ばないそうです。なので、くしゃみをしている人からある程度距離があれば、飛沫感染によって感染する可能性は高くありません。

 

高山医師によれば、コロナウイルスの症例を分析すると、「電車やレストランなどで空間を共にしたぐらいでは感染していない。咳やくしゃみによって生じる飛沫を吸い込むことでも感染するが、それすらも限定的な印象」とのこと。

 

以上から、コロナウイルスの場合は、私たちにとって感染の脅威を感じやすい、電車の中で「わ、隣の人くしゃみしたんだけど‥」みたいな状況だけですぐに感染するというものではなさそうです。ただ、以下に書きますが、すでにコロナウイルスに罹っている患者さんと濃厚接触している場合は飛沫感染のリスクが上がると思います。

接触感染とは

ウイルスが付着した手指で鼻や口や目に触れることで、粘膜などを通じてウイルスが体内に入り感染することです。つまり、感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後、その手でドアノブ、スイッチ、手すりなど周りの物や場所に触れるとウイルスが付き、他人がその物や場所を触るとウイルスが手に付着し、その手で口、鼻、目を触ることで粘膜から感染するという経路です。

 

蛇足ですが、日本人はくしゃみを手で押さえますが、アメリカ人は腕あたり(正確には衣服)で押さえます。日本人的になんとなくマナーが悪いように見えるのですが、接触感染を押さえるという意味では有効かなと思います。(ただ、衣服の上でもウイルスは生存するので接触感染を完全に封じられるわけではないですが)

 

高山医師いわく、「もっとも効率的に感染を引き起こしているのは、ドアノブや手すり、トイレなどに付着していたウイルスに触れて、その手を目鼻口の粘膜に付着させることで感染している」ことなのだそうです。

 

以上から、ウイルスへの接触は、くしゃみなどの飛沫と違って目に見えないですし、予防する側も手落ちになりがちなので、コロナウイルスの主要な感染経路になっていると思われます。ただし、コロナウイルスは以下のとおり空気感染したり、特別強力なウイルスというわけでもないので、接触感染の存在と可能性を認識して防衛することは可能です。

空気感染とは

現状の結論として、厚労省は「空気感染が起きている可能性はないと考えている」と述べていますが、飛沫感染との比較のために念の為に記載しておきます。

 

空気感染とは飛沫核感染ともいい、飛沫核とは、飛沫の水分が蒸発した小さな粒子のことです。これを吸いこむことで感染するのが飛沫核感染です。

飛沫がウイルスにほこりや水が付着するので直径5μm以上であるのに対し、飛沫核は水分がない分軽く、長時間たっても空気中に浮遊し、しかも遠くまで飛んでいくことができてしまいます。したがって、患者から十分な距離をとっていても感染してしまうのが怖いところです。 

 

コロナウイルスの感染力

季節性インフルエンザよりは低い程度、とよく言われるのですが、具体的なイメージとしては、ひとりの患者が何人に感染させるかを表す基本再生産数が2〜3程度と考えらえているとのことでした。

 

劇場空間におけるコロナウイルス感染のリスク

以上をもとに、今回なぜスポーツ・文化イベントが中止等要請なされたのかを考えてみると、まずは不特定多数が集まる場所は感染者(特に無症状感染者が厄介です)がいるリスクも高まりますので、注意が必要になります。

ただ集まって10分で終わるならまだしも、共用トイレを利用すれば接触感染率が上がりますし、参加者同士が相対して会話する時間が長いイベントの場合には、飛沫感染のリスクも上がるといえると思います。

 

では、上記は屋外・屋内かかわらずあてはまりますが、劇場空間のような閉鎖空間になると感染のリスクは高まるのでしょうか。たしかに、高山医師は、「密閉された空間に有症者と長時間いると感染するリスクが高まってくる。」と述べておられます。また、日本の症例からは、他の発症者と同居したり閉鎖空間に一緒にいた濃厚接触による発症が見られます。

 

とはいえ、劇場の場合は、大体1時間に1度くらいは休憩があるはずで、ホールのドアが開いて閉鎖空間ではなくなります。(もちろん換気に限界はありますが)また、ホワイエもドアや窓を開放できる可能性が高いですし、数時間で劇場自体を出ますから、この程度で「密閉されている空間に長時間いる」と評価されてしまうのか、疑問の残るところです。

私は、むしろ窓の開けられない高層ビルにある会社に行き、1日中オフィスワークをし、トイレを共用している人の方がよっぽど感染リスクが高いように思いました。会社だと簡単には休めないでしょうし。

 

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開催続行の場合の開催者側のリスク&お客様へ

高山医師は、最新Facebook投稿で「映画館に行っても大丈夫ですか? 残念ながら密度が高く、時間が長いことがリスクを高めています。とくに、高齢者や基礎疾患のある方は避けていただいた方がよさそうです。」と記載し、「実のところ、現時点では、皆さんが普通に暮らしていて、新型コロナウイルスに感染する可能性はほとんどありません。ショッピングモールに行こうが、ボーリングに行こうが、まあ感染することはないでしょう。」と述べておられます。

このニュアンスや上記の検討から、私は、「劇場公演は、感染のリスクをゼロにすることはできないけれど、絶対に中止しなければならないものでもない」との評価に至っていますが、開催続行を決めた主催者は、万全の対策を取るべきことは間違いありません。

 

なぜなら、もし会場でコロナウイルスに罹患する方が発生した場合には、罹患された方からの訴訟リスクがあるからです。また、訴訟に至らなかったとしても、お客様が劇場で不安を覚えられた場合には、今後の活動に対する大きなレピュテーションリスクにもなりえます。中止の場合と比較しても同等のリスクだと私は思います。

ただし、そのリスクの発現は、主催者とお客様側の努力で最小限まで抑えられると信じています。

大切なお客様を守り、そして抱える団員や主催者自身が活動を続けていくためにも、本番直前のタイミングでかなり大変だとは思いますが、上記の文献などを参考に、できうる限りの準備をしていただくことが肝要です。私は今後個別の案件をサポートしていきますので、以下のtwitter上でコメント等いただければ、個別にご連絡いたします。

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1つの参考例として、お隣韓国の取組みが徹底していて参考になりそうだったので、シェアさせてください。

 

また、観客の皆さまにおいても、自ら感染のリスクの高い場所に赴くことを認識していただき、来場までの健康管理と十分な準備で劇場に向かっていただければと思います。舞台上の演者は、この本番直前期に、実施か中止かに心をざわつかせながらも本番に向け日々精一杯取り組んでいます。主催者、劇場側の職員全員がマスクをかける等、異様な光景を目の当たりにするかもしれませんが、ぜひ温かい気持ちで、舞台を存分にお楽しみ下さい!