BALLET & DANCE = My LIFE

バレエのこと。ダンスのこと。

バレエ界以外で活躍するバレエ経験人材が増えることを祈って

先日、素敵な機会をいただき、「バレエと私」とのタイトルで、バレエが私に与えた強みや人生に与えた影響についてお話してきました。

主催してくださったのは、「バレエ界をサスティナブルに」というモットーを掲げ、バレエ愛をもつ学生さんたちが構成する団体Wake Up Pointe Shoesさんです。

Twitterでご連絡をいただき、とっても素敵な活動をされているなと感じ、とんとん拍子に決まったイベントでした。

 

聞いてくださったのは10代後半から20代前半のバレエ経験がある皆さん。バレエへの向き合い方やこれからのキャリアで絶賛悩み中・迷い中とのことでご参加いただきました。

私から見たら若いというだけで羨ましい限りですが、同じような経験を持つ者として、改めて自分の半生を棚卸しし、共有し、皆さんとディスカッションしてきました。

色々なお話ができたので、せっかくならまとめておけば(超ニッチですが)何かの参考になるかもと思い、ブログにも綴っておこうと思います。

 

2023年5月、3年半ぶりにロンドンに行ってきました。このあたりのこともいずれ書きます…

 

私の人生はバレエでできている

私の人生は、ざっと以下のような感じ。
第1章:本気でダンサーを目指したバレエ漬けの時代(1991年~2003年)
第2章:方針転換しつつもバレエへの未練が捨てられなかった移行期(2003年~2014年)
第3章:バレエ以外のキャリアが確立され一歩引いた目でバレエを俯瞰する現在(2014年~)

人生の中でバレエの濃淡は適宜変化はあるものの、やっぱり私の人生はバレエとともにあります。

年月を経るにつれてバレエと自分の関係性は変わっていき、バレエと自分が混然一体としていた時期と比べると、いまは随分とバレエを客観視することができるようになりました。

バレエがなくなる=生きる動機がなくなる、だった学生時代に対して、いまは主軸が法務に移っているので、バレエを失う怖さがない分思いきりバレエに関与できている部分もあるのかもしれません。

 

バレエのことを割り切るまでに10年

今回自分の人生を振り返ってみて改めて気づいたのは、移行期(第2章)が思っていたより長いんだなぁということ。
参加者の皆さんからは、バレエの道から方向転換しつつあるタイミングではあるものの、なかなか決めきれないとのコメントが多かったのですが、「そんなに簡単に割り切れるものではない。」というのは私自身も身をもって体験しています。

2014年に最終的にバレエを割り切って考えることができるようになったのは、自分の中で「これだ!」と思える仕事に出会えたことが大きかったように思います。それまでは、弁護士業務自体がしっくりきておらず、複数回転職も経験しましたが、2014年になって、ようやくやりたいことが明確化して仕事に邁進していくことができました。

やっとバレエから吹っ切れて、新たな道を歩み始めた瞬間だったと思います。

 

そして、今振り返ってみて思うのは、「バレエは人生を懸けてやってきたものだから、簡単には割り切れなくて当然だった。」ということ。
結果的には焦って何かを決める必要はなかったし、後悔が残る選択をする方がよっぽど良くなかった。というか、バレエに対して燻る気持ちをきちんと成仏させないと中途半端になりますし、結局何度でもバレエに戻ってきてしまいます。
そんな自分に自己嫌悪を感じることもありましたが、決してダメことではなく、次に進むためのステップでした。行きつ戻りつしながら少しずつ前に進むものだと受け入れること。何度戻っても前に進むことをやめなけば、どこかで必ず道が開けるものだと思います。

 

バレエから得たもの

スポーツや芸術に取り組んできた人全般に言えることだと思いますが、日々鍛錬してきて一定の体力があると、集中力の質が違います。一つのことにコミットするには気持ちと体力の双方が必要ですが、基礎となる体力はバレエで十二分に培えていると思います。

ただ、バレエをやめると体力はどんどん低下するもの。特に年齢を経るにつれて加速していきます。私は病気だったせいもありますが、バレエによる体力貯金はもはやなく、集中力の質の低下を痛感中。少しずつ体力を増やしていかなければ…。

 

また、舞台で他者を察知する力や空間を支配する力、また本番の強さといった点も、舞台芸術という一発勝負の世界で生きてきたダンサーの強みであるように思います。どの世界においても「ここぞ」というところで実力を発揮できることは大きなアドバンテージ。周りにダンサーばかりいると、そんなことは当たり前かもしれないけれど、一般社会から見たら立派な能力です。バレエをやってきた人たちは、そういった特殊技能を身に着けていることに自信を持って社会に飛び出していってほしいと心から思います。

久しぶりのオペラ座。もっと生で観ないといけない。

才能で淘汰されない世界があることを知る

今回のディスカッションで出てきた話として面白いなと感じたこととして、「バレエのように才能の有無で決まってしまう世界はほんの一握り」という点が挙げられます。
バレエは、もちろん練習量や努力で補える部分はあるとしても、最後は、体型・柔軟性・身体能力・存在感といった努力でいかんともし難い「才能」で決まってしまう世界です。


でも、これは芸術やスポーツなど限られた世界の話であって、現実の世界のほとんどは努力すればどうにかなる世界だと感じています。特に、社会人になってからは、多くの人が目の前の仕事に追われ、日々の生活で忙殺されていってしまうので、ほんの少しの努力が大きな差になって表れます。

 

小さなころから地道な練習を積み重ねてきたダンサーたちは、努力の習慣と成功体験があり、努力できる才能を必ず持っています。そして、努力でどうにかなる世界を「自分次第でどうにもなる世界」とも感じられるはず。この感覚が一般社会でいかに強みになるか、改めて思い出す良い機会となりました。私自身も司法試験などを通じ、努力でできてしまうことの単純さや到達可能性の高さを身をもって経験してきてはいますが、改めて自分への戒めとして、仕事を言い訳にせず少しずつ努力することを習慣化していきたい。

 

社会で活躍するバレエ経験人材が増えること=バレエ界を盛り上げること

私は、ダンサーを志していた人たちが、バレエ以外の世界でもどんどん活躍し、「ダンサーを目指す人たちってこんなに世の中で活躍できるんだよ」と夢を見せることが、次世代のダンサーを生み出し、バレエの世界を盛り上げていくことになると信じています。


私自身も微力ながらそのような存在になれるように日々頑張っているつもりです。今回のセミナーに来て下さった方もそうじゃない方も、バレエ・ダンスに関わる方々が、仮にダンサーの夢をあきらめなければいけなくなったとしても、それは新たな道の始まり。

それまで培ってきた長い時間と自分の経験を信じて、次の道へと突き進み、バレエを経験した多くの若者が、少しでも世の中の幅広い分野で活躍していくことを願ってやみません。