このブログは、とっつきにくい「バレエ」の世界が少しでも身近になり、もっと多くの人が「バレエを観に行ってみようかな」と思い、実際に劇場に足を運んでくださるように、との思いを込めて書き始めました。
さて、バレエに限らず絵画・クラシック音楽・オペラなど、西洋芸術って敷居が高いですよね。基礎知識がないと鑑賞のポイントがわからないので、どう見たり聞いたりしたら良いのかわからず、「ふーん」で終わってしまったり、睡魔に襲われてしまったり‥。
「Don’t think, feel!」って言う人もいるんですけど、興味がさしてないものに感性を研ぎ澄ませと言われても無理があるように思います。
だけど、隣にガイドさんがいてくれて、作品の背景やちょっとした鑑賞のポイントをもらいながら見たり聞いたりできたらどうでしょうか?
誰でも馴染みのあるところでいうと、映画や、旅行で訪れる遺跡などについて、映画批評家や現地ガイドさんのコメントがあると急に奥行きが広がって見えて、ぐっと惹き込まれる経験をされたことのある方は多いと思います。
私は、このブログが、そんなガイドさん的なものになったら良いなと思っています。
(ただ、あらすじの説明はWikipediaをはじめたくさんウェブページがあるので、ややマニアックな情報を盛り込みつつ、映像とリンクさせることで視覚的な理解のしやすさに努めています。)
では、なぜそんなことを考え始めたのか?今日は、その「そもそも」の部分を書いてみたいと思います。
バレエをビジネスに
私は、今はバレエとは無縁の職業に就いていますが、高校を卒業するときにダンサーになる夢を諦めたその日から、「いつか日本のバレエを(ダンサーではなく)裏方としてサポートしたい」と思って生きてきました。
そんなバレエバカの私が常々思っているのが、「バレエを安定的なビジネスとして運営し、ダンサーが安心して舞台に集中できる環境を作りたい」ということです。
負のスパイラル
*ここからは、私の想像も含みます。間違っていることに気づいたら訂正しますし、考え方も変わるかもしれません。(なので、タイトルにも日付を入れました。)
日本のバレエ団の公演は、以下の負のスパイラルをぐるぐるしていることが多いと想像しています。
バレエ団運営における最も根本的な課題は、慢性的な資金不足でしょう。資金がなければ、当然公演数を増やすことも、質の高い公演を提供し続けることも難しくなります。そうすると、当然観客を惹き付けることも難しい。結果、公演収入が少なくなって次に向けた資金が十分に集まらない、ざっくりこんな負のスパイラルです。
バレエ団の主事業は公演を打つことですが、それが火の車になっていては「安定的なビジネス」とは到底言えないし、そんなバレエ団で踊るダンサーにとっても、「安心して舞台に集中」することは難しい環境です。
資金不足がさらなる資金不足を呼ぶ
資金不足は、公演の質・量のブレーキになる以外にも、様々な負の影響を与えるほか、さらなる資金不足を招く原因にもなります。
大きな問題の一つは、資金不足のしわ寄せがダンサーに来ていることです。日本の芸術界の多くが同じ悩みを抱えていると思いますが、バレエ界も例に漏れず、ダンサーの「情熱」がバレエ界を支えています。彼らは、(全員ではありませんが)生活の保障を十分に受けられないまま、それでも大好きなバレエを続けるため、日々肉体労働に臨んでいます。
舞台のための練習だけでなく、生活費を稼ぐためバレエ教師としての時間も割かなければならないダンサーもいて、舞台に集中できなかったり、怪我のリスクを高めてしまっている点でも心配です。
また、バレエ団がプロモーションやマーケティングを専門に運用するスタッフを雇ったり、プロに高額なコンサルをお願いしたりすることも難しいと思われます。そのため、潜在顧客に十分に公演情報をリーチさせ、魅力を伝えることができていないことも、資金不足の影響の1つといえるでしょう。
古典芸術(バレエ、クラシック音楽、オペラ等)の観客は高齢化が進んでいて、何も手を打たなければ観客数の減少は進んでいくばかりなので、若い世代への積極的かつ有効なプロモーションは喫緊の課題のように思います。
結果として、バレエの魅力が十分に伝わらなければ、民間企業の協賛金の獲得等他公演収入以外の資金調達も難しく、資金不足に拍車がかかります。
ダンサーもバレエ団も幸せになるアプローチを
ただ、誤解していただきたくないのは、バレエ団も「したくてこうしているわけではない」ということです。悪意を持ってダンサーに収入を分配していないわけではなく、「ない袖は振れない」環境によってそうせざるをえない状況に追い込まれています。
(ダンサーのことを大切にしていないバレエ団があるとしたら淘汰されるべきだと思います。)
かつては、ダンサーの労働条件が良くないのであれば、ダンサーがバレエ団に交渉する力を付けることが大事なのでは、と考えた時期もありましたが、手元に余剰のないバレエ団相手に交渉してみても大きな進展は起こりえません。今は、交渉以前に、まずは資金調達方法を検討・実行し、バレエ団運営に変化を起こすことが、ダンサーにとってもバレエ団にとっても前向きなアプローチだろうと思っています。
できることから一歩ずつ
バレエ団の資金調達手段は、①バレエ公演による興行収入の他に、②国・地方公共団体からの補助金、③民間企業からの協賛金、④個人からの寄付金、そして新しいところでは、⑤クラウドファンディングあたりが考えられます。
(その他、付属のバレエスクールがあり、バレエ団と収支を合算している場合、⑥スクール収入は、バレエ団経営の重要な基盤となります。)
諸外国に比べて②~④のいずれもが少ない(印象を受ける)日本においては、①の公演収入(=観客動員数)が極めて重要な位置づけになることは疑いようがありません。
そして、もっと観客動員数が増え、バレエ公演が活況になることで、「日本のバレエを芸術として存続させる必要がある」とか「観客動員数の多いバレエに協賛することが会社のイメージアップになる」と感じる方が1人でも増えることが、②③の増加にもきっとつながるだろうと私は信じています。(甘いかもしれないですが‥)
こんなことを考える中で、まずはバレエのファンを増やすために自分1人でできることを始めてみようということで思いついたのが、ブログなどのソーシャルメディアでした。
より多くの方々に継続的にバレエを観に来ていただくため、少ない資金で何ができるのか、⑤クラウドファンディングを使って何かできないか、コストダウンの余地はないのか、根本的に変えなければならない制度があるのではないか等々、この先に続く話はまたいつの日か、もう少し具体化したときに。
それまでに、今後は、もっと現場の声や海外事例などにも当たっていくつもりです。
とはいえ、私は経営のプロでもコンサルタントでもないので、すぐにバレエ団の経営に関わり、結果を出すことは難しいでしょう。
なので、まずは自分がこれまで培った専門性をバレエの世界で活かしてしっかり価値貢献し、バレエ団の経営に近づいていくという現実的な取組み(とそのためのインプット)も、並行して実施していきます。
未来のバレエ界のために
先日開催された、世界の十代ダンサーが一流バレエスクールや一流バレエ団所属のきっっかけを掴む登竜門、ローザンヌ・コンクールでは、入賞者8名のうち3名が日本人でした。
日本には、世界に通用するレベルのダンサーを輩出できる力があり、世界各国どんな国にも1人は日本人ダンサーが活躍していると言っても過言でないくらい、今日もどこかで、日本人が美しいバレエで世界のお客様を魅了しています。
そんな素晴らしい日本のバレエがもっと日本の世の中にも浸透し、ダンサーが安心して踊れる環境が生まれることを目指し、何かお手伝いできたらと思っています。
皆様の誰か1人でも、バレエに興味を持ってくださったら、(そしてもしも劇場に足を運んでくださったら‥)これほど嬉しいことはありません!